この小説を初めて読んだのは高校3年の時で、その次が大学2年生の4月だった。筆者の通っている大学が今年学生募集を停止したことで、本書の内容が急に現実味を帯びて見えた。
「――それでは、これより卒業証書授与式を行います。全員、礼」。消化できない沢山の思いや感情を持った女子学生たちの存在を無条件で受け入れる、私立萌木女学園はそんな女子大学であった。
本作は、閉校が決まった女子大学を舞台にした連作短編集になっている。しかし物語で主に描かれるのは普段の大学生活ではなく、閉校後に行われた半年間の特別補講合宿の様子である。朝起きられない、腐女子、過食症、拒食症といった様々な学生が登場する。本書の裏表紙に記載された解説では「個性豊かな〝落ちこぼれ〟たち」と形容されている。
特別補講合宿では、学生は相部屋で生活することになり、本作の1編「萌木の山の眠り姫」では、偶然同じ部屋になった2人の学生の様子が描かれる。大学受験に失敗したストレスで朝起きられなくなった朝子と、過眠症の夕美の、ともに睡眠に問題を抱える2人。「私の人生詰んだ」と将来に絶望する朝子が、夕美と過ごすうちに考えが変わっていく、成長物語でもある。ある日、寮で夕美がこんなことを言う。「私たちって、似てるよね」。しかし、自分を好きになれず、絶えず他者と比較をする朝子は、その言葉をなかなか受け止められない。コミュニケーション能力があって、容姿も良い夕美ちゃんとは自分は比べものにならないと。
そんな彼女の思いは、過眠症の夕美が校内で倒れたことをきっかけに変化する。朝子は自分が夕美を助けなければという使命感にかられ、自分のためにではなく、他者のために働きかけるようになる。後ろ向きだった朝子はいつしか、閉校する大学に対しても、「私立萌木女学園の終焉を、カーテンコールよろしく、精一杯飾ってやろうじゃないか」という強い思いで、残りの学校生活を送る決意をする。他の短編にも共通している事だが、本作では別々の悩みを持つ人どうしが相部屋になり、その学生たちを、理事長含め教職員が、ともに悩みを解決へと導いていく、という筋になっている。
カーテンコールという題名通り、物語の最終章では卒業式の様子が描かれる。大学は幕を閉じてしまうが、これからの新しい人生を、観客つまり周囲を恐れずにいて欲しい。主人公である自分でいて欲しい、と理事長はいう。ナイーブだった学生たちは、周囲の人に見守られながら成長し、今日卒業するのだ。物語は、冒頭の言葉をもって幕を閉じた。
今年に入ってから、いくつかの学校で学生募集停止が発表された。学校がなくなると聞いて驚いている、そんな学生・教職員の方々に是非読んで欲しい1冊である。同じ状況に直面しながらも、果敢に現実に立ち向かった学生たちの記録なのであるから。
★かわた・まなみ=神戸海星女子学院大学2年。
親戚の家で飼ってるキジトラという種の猫がついに22歳になりました。会いに行くとずっと何かを喋っているのですが全然理解できません。もっと仲良くなりたいです。