【キャプテン 君は何かができる/山田明】評者:福留舞  (二松学舎大学文学部国文学科2年)


キャプテン 君は何かができる
著 者:山田明
出版社:学研プラス
ISBN13:978-4-05-204596-
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 本作品は、ちばあきお作の野球漫画『キャプテン』を原作とした、山田明の小説である。

 主人公は谷口タカオ。野球の名門、青葉学院から無名の墨谷二中に彼が転校してくるところから物語が始まる。谷口は墨谷二中の野球部員たちから、「青葉の野球部員が転校してきた」と大きな期待をかけられる。しかし、谷口は憂鬱だった。なぜなら、谷口は元青葉学院野球部員でも、二軍の補欠だったからだ。のびのびと野球を楽しみたいという理由からわざわざ無名の中学校に転校した谷口にとって、これはたまらない出来事だった。もっと悪いことに、青葉のレギュラーだった、と勘違いまでされてしまう。谷口は弱気な性格から、違うと否定できないでいた。

 そんな谷口を、「だったら青葉の選手として通用するくらい、うまくなればいいじゃないか」と彼の父親が叱咤する。いっそ野球部をやめようか、と考えていた谷口だが、父親との秘密の練習の中で、徐々に自信と実力をつけていった。

 この陰の努力が認められ、谷口はキャプテンに指名された。谷口の努力を知っていた前キャプテンは、「今度はキャプテンとして、みんなの期待にこたえてくれないか?」と、野球部を託した。谷口キャプテンの努力と挑戦の始まりである。

 しかし、前途は多難だった。この後も、ノックが打てない、気後れして後輩にも意見が言えないなど、選手としてもキャプテンとしても不完全な姿が描かれる。

 谷口は決して、素質や才能に恵まれた天才肌ではない。「普通の少年」である。「努力なんてバカバカしい。一生懸命やったって、ダメなものはダメなはずだ」。これは野球部のマネージャー、詩織の言葉である。

 谷口は、野球部を強くしようと努力した。実力のある一年生をレギュラーにするため、自分を慕ってくれるが実力の劣る後輩を悩みながらも、レギュラーから外した。地区大会で優勝するために、朝練の時間を早めたり、ピッチャーとの距離を狭めてのバッティングなど、厳しい練習を行った。それに反発する部員もいた。レギュラーを外された後輩はひどく落ち込み、厳しい練習に仲間からは「調子に乗ってんじゃねえぞ!」となじられた。

 それでも谷口は、懸命に野球部を引っ張った。すると仲間たちも「あいつらに俺たちの実力を見せつけてやろうぜ!」と奮起した。その姿を見て、努力に否定的だった詩織も、「一生懸命な気持ちは、本当に伝わるのかもしれない」と思い始める。

 努力とは曖昧な言葉であり、口で言うことは簡単だ。だから谷口は行動で示し続ける。ロジカルな言葉は一切ないが、みんなの先頭に立ち、誰よりもユニフォームを汚す。そんな谷口が言うからこそ、「絶対にあきらめるな」という飾らない言葉が琴線に触れるのだと思う。

 私は現在、教員を目指している。勉強すればするほど、自分の実力に悩む。同じ教員志望の友人たちと自分を比較し、ネガティブになることもある。そんなとき、谷口の「本気でやれば、きっとできる」という言葉を思い出す。悩む暇もないほど本気でやってみる。「こんなときは走るに限る。そうすれば余計なことは考えないし、考える暇もない」

 とにかくやる、そうすればネガティブになる時間ももったいなくなる。本気の努力と挑戦とは、そういった姿勢の中に現れるのではないかと思う。

この記事を書いた人

★ふくどめ・まい=二松学舎大学文学部国文学科2年。現在の目標は剣道二段と漢字検定準一級の取得。卒業後は母校の高校で国語を教えたい。

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