誰もが小、中学生時代に食べてきたであろう給食。今一度当時を振り返って給食のメニューを思い出してみてほしい。「好きな給食のメニューは?」と聞かれると、「揚げパン!」と口をそろえて言うのが筆者の世代では決まり文句だった。しかし今改めて考えたいのは、「給食の果たすべき意義とは何か」である。砂糖のまぶされたパンとラーメンが並ぶ昼食は果たして成長期である子供たちにふさわしいのか。本書はそうした現代の学校給食を「変な給食」と題して、見つめなおすための一冊である。
この本の著者は、東京農業大学栄養学科を卒業したのち、欧米模倣の栄養教育に疑問を持ち、日本列島を縦断・横断しながら「FOODは風土」を提唱する、伝統食と健康についての研究者である。また、プロスポーツ選手の食事指導や病院の食事相談なども請け負っている。本書は一見すると面白要素が強めの一冊に思われるが、一読すれば、著者がどれほど食を重要視しているのかが窺い知れるはずだ。
本書は七章で構成されており、最大の特徴は、各章ごとの「問題給食」の紹介に、一枚一枚カラー写真を使用していることである。そして、各章の終わりに「おむすびコラム」と題して学校給食について考えるべきトピックがまとめられている。まず、第一章では著者が考える「ひどい献立ベスト6」を紹介し、なぜ著者が学校給食に疑問を持ったのかが書かれている。第二章から第六章ではそれぞれの「変な給食」にタイトルをつけて紹介、解説している。
そこで最も目を引くのは第六章の「危険‼砂糖、油まみれ‼」と題された給食である。このそれぞれの給食には、砂糖と油がこれでもか、と言うほどに含まれており、メニューの字面を見ただけで筆者は胸やけを起こしそうになった。しかし、筆者自身もほんの4年前までこうした給食を食べていたのである。ソフト麵に野菜の入った野菜ラーメン、ここまでは良いだろう。ここに副菜となるおかずが来れば問題ない。が、実際に食べていたのはココアパン。ラーメンに甘いパン、好んでこの組み合わせにしたいと思う人はまずいないだろう。他の章でも、著者は「お菓子給食」「居酒屋ですか?」など、様々な「変な給食」が子供たちに提供されているという問題点を「おむすびコラム」で解説されるトピックとともに示している。最終章では、正しい給食の在り方、成長期の子供に必要な「食事」とは何なのか、著者の最終的な考えが述べられている。
著者の言う「変な給食」を食べている当人たちは「栄養バランスの取れた給食です」と言われて出された給食を「栄養バランスの取れた給食なんだ」と思い込み、疑うことすらしない、またはできないのである。本書はこうした子供たちを正しい「食事」へ導く大人への食啓発本である。「給食」の文化がある日本において、「給食」はすべての世代における共通項なのだ。そんな全年齢対象のこの本を、特にこれから子供を持つ世代に読んでほしい。自分が食べた「変な給食」を我が子も食べることになると想像したら……。次の世代の子供たちに「正しい給食」を食べてもらう、本書はその目的を果たすための助けになるだろう。
★のむら・ももか=高崎商科大学附属高等学校3年。
和文化について関心を持っており、3歳から日本舞踊、高校1年から着付けを習っています。将来は和文化に関連した職業に就きたいです。